ソニーはアップルの足下にも及ばない(PCメーカーとしては)

自分はジョブズの言行録とかそういう本はまだ一冊も買ってないし、買う気もない。ただ、ネットに出ているジョブズの記事にある発言を読む限りでは、なぜこの人が変人扱いされるのか私には全く理解できない。逆にジョブズを変人扱いする人の方を、妙なバイアスのかかっている人だなと感じてしまう。

「デザインとは外見の美しさだけでなく機能の美しさも意味する」というジョブズの発言は、特殊な主張でも何でも無く、実はデザインの世界ではごくあたりまえの主張である。私は大学にいた頃、デザイン論の講義を少しだけ聴いたことがあるが、一番入門の講義の一番最初で「デザインとは外見だけでなく機能のデザインも含めたものである」と講師が言っていた。そのくらい基本的な話である。誤解を恐れずに言えば、ジョブズの言う「デザイン」とは「仕様」の意味であると言ってもいいかもしれない。そういったデザインの原則を厳しく守ったところこそが、ジョブズの本質だったように思えて仕方が無い。

ジョブズエジソンと言うより、建築分野でのバウハウスのように、IT分野におけるデザインの地位を高めた人物として歴史に残るべきではないか。

いくつかのジョブズ追悼記事で、ジョブズソニーを意識していたという記事が出ている。しかし、少なくともPCメーカーとしては、ソニーはアップルの足下にも及ばないと私は思う。

なぜなら、ソニーVAIOのOSはWindowsであり、Macは独自OSであるからだ。アップルは一貫して独自OSの製品を作ろうとしてきたと思う。ジョブズのNeXTもそうだ。OSのオリジナリティは問題ではない。むしろOSの技術的な性格はオープンであった方がいい。重要なのは、製品として独自OSにしている、ということだ。独自OSということは、製品の仕様を全てコントロールできると共に、製品についての全ての責任を持つ、ということだ。

ソニーはじめ国内PCメーカーはオープン化の流れに負けて、独自OSのPCを製品にしていけなかった。だから、Windows Vistaの動作が遅くて評判が落ちたとき、VAIOを含む国内PCの評判も一緒に落ちたはずだ。確かにそれはMicrosoftの問題でソニーはじめPCメーカーの責任ではなかったかもしれない。だから明確にメーカーやPCの評判は落ちたかどうか、はっきりと確認はできなかったかもしれない。しかし、例えば、私が、Windows Vistaの遅さにうんざりし、VAIOを含む国内PCへの興味を失った事実に変わりは無い。

Macは独自OSで、ハードウェアも自分で作っていたから、そういった事実をはじめから発生させなかった。旧Macが不安定だったとしても、それは常にアップルの責任であった。そしてアップルは経営危機に落ち、そしてジョブズを迎えて再生した。

最初、「ソニージョブズの足下にも及ばない」というタイトルでジョブズをヨイショする雑文を書こうと思ったのだが、書いているうちにアップルをヨイショする文章になってしまったので「ソニーはアップルの足下にも及ばない」というタイトルにした。それからプレステとかについては、ソニーが製品についての全ての責任を持っていると思うから、「PCメーカーとしては」と但し書きをつけた。

ソニーは追悼の映画なんか作る暇があったら、VAIOから撤退して、プレステ一本でいくことを真剣に考えたらどうか。きっとジョブズもその方が喜ぶよ。