梅田望夫「ウェブ進化論」


昔は、自分は、プログラムを書いたりコンピュータを操作したりする仕事が主だった。しかし、転職した関係で、業者との調整・指示や、一般人への説明のような仕事が多くなり、参考になればと思いこの本を手に取った。
買ったのは1ヶ月くらい前で、その後「日本のWebは残念」の件を知って、これは早く読まねばと思いつつ、ようやく読み終わった。文章を読むのが遅いのが悩みである。


この本には、ネットの「こちら側」と「あちら側」という表現が本の中でよく出てくる。


話は変わるが、自分は、大学の頃空手をやっていた。子供の頃から運動が苦手で、勉強の成績がよくても、体育だけは5段階評価で2とかだったので、コンプレックスがあったわけだ。
打撃系の格闘技がやりたくて空手部に入ったのだが、実は、打撃系の格闘技なら、少林寺拳法部もあった。でも空手部を選んだ。それは、空手と少林寺拳法のどっちが強いかという理由ではなく、その大学の空手部は組手で対外試合に出ていて、少林寺拳法部は出てなかったので、試合に出ている部で鍛えた方が強くなれるんじゃないかと思ったのが理由だった。今考えると、試合に出るから強くなれる、という考えも、必ずしもどうかとも思うが、まぁそのときはそう思った。
その後、まだバブルの残照が残っていた(笑)90年代初頭の数年間を、ボコボコに殴られながら過ごした。あまり強くなれなかったので、部の練習の方針や指導内容に内心不満を持っていた。試合も、ルールがこれでよいのかと疑問を持っていた。試合にもあまり出してもらえず、出てもほとんど勝てなかった。練習がきつかったので、休日はずっと寝てばかりで、あまり遊びにも行かなかった。彼女もできなかった。何年かがんばってみたが、結局やめてしまった。
しかし、今考えてみると、やめたことはともかく、不満を持っていたのは浅はかだったと思う。もちろん、不満を持たないほど、人間は簡単に強くなれるものでもないと思う。しかし、何年間もボコボコに殴られ、試合に出してもらえず、出してもらっても負け、逃げるようにやめたという経験によって、その後もずっと自分の弱さを自己嫌悪しつづけることができた。それは、自分を根底の部分で賢くするということでもあった。


本の話に戻すと、つまり、ネットの「あちら側」という表現は、対外試合をする場所というような感覚に近いのかなぁ、と解釈した。


感想になっているかどうかわからないが、この本を読んでそんなことを考えたり思い出したりした。期待通り、今のコンピュータやネット社会の常識について深いところを考えるという意味で、参考になった。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

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